カサブタ。短編集。
『5:言わなくっても、わかってよ』
憂の研究室では、
いじめの起こるきっかけについての研究、
というか話し合いが今日も続いていた。
私は黙って話を聞いているだけ。
人がたくさんいるから、私は憂から距離をおいて座っている。
最近忙しくて、
全然二人きりになれない。
別にどってことないけど。
二人きりじゃないと、
会話もよそよそしくて。
だんだん、
堪えられていた事が堪えられなくなる。
女子生徒と話をしてるのを、
見たくない。
ズルイよ。
私だって話したい。
触れたい。
「神代くん。」
憂の声が私を呼んだ。
視線を移すと、
憂は立ち上がったところだった。
「資料室に行くから、一緒に来てくれないか。」
そうだった。
『5:言わなくっても、わかってよ』
そんなの憂には
当たり前の事。