カサブタ。短編集。

『4:甘え方なんてわからない』

結局、
私は憂のいる大学で精神医学を学んでいる。

憂はじつは28才で
助教授だということが判明した。


もうすぐ29才。

若い。

だから、モテる。


そのルックスも加えてモテる要因だ。

憂のまわりにはいつも誰かしら女子生徒がまとわりついている。

今だって。

先輩をのかしてまで、
憂を独り占めしようとは思っていないけれど。


具合が悪い。


朝からボーッとするとは思っていたけど、
寒気までしてきた。

でも次は憂の講義だし。

私は大人しく講堂の後ろのほうの席に座った。

具合が悪いなんて言ったって、
憂はこのあとまだ仕事がある。


言ったって仕方ない。


これが終わったら今日は終わりだし、
帰ればいい。

「由香。」

不意に降ってきた声に、
顔を上げる。

「具合が悪いなら早く言え。」

憂は不機嫌に言って、
額に手の平を滑らせた。


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