ワタシと恋をしましょう!
「全然。でも遅刻するのは恥ずかしいかなって。よし、出来た!」
私も支度を終えて、振り返った。
鏡越しよりも本物がかっこいい、なんて口が割けても彰人さんには言えないよね。
「そうだな、行くか」
軽くキスをしてから、駐車場へ向かう。
そこには……
「あ!これって!」
「ああ、やっと戻ってきたよ」
赤い車だった。
職員駐車場でいつも目立ってた赤い車。
私の大好きな色。
「……………」
私の脳裏には今までの様々な出来事が駆け巡った。
赤い車はなくてはならない大切なもの。
そう思うと自然と言葉は出なかった。
「どうした?」
「ううん、先生と出会って良かったと思っただけ」
言ってから恥ずかしくなって、さっさと車に乗り込んだ。
もちろん助手席に。
「ありがとう」
そのあとに続いて車に乗った彰人さんは真剣な表情でそう言った。
私は改めて運転席を見れば、いつも通りの彰人さんがいた。