香る紅
この私立御陵学園は、幼稚舎から大学部まで一貫教育を徹底している学校で、御門一族の経営している学校。

だから、ここには御門一族の将来を担う、貴重な子供たちがほぼみんな、通っている。

みんなと言っても、御門一族は大きいけれどそんなに人数が多いわけじゃないから、各学年に2,3人ずつしかいないのだけど。

緋凰とクラスは一緒だけど、前はずっと一緒にいたといっても間違いではないのに、この頃、一緒に居させてくれない。

一匹狼が似合ってしまう緋凰だけど、ここまでだと、やっぱり。

「で?織葉、今日は何されたの?いやに顔色が悪いけど。」

「やっぱり、祈咲ちゃんには、見破られちゃうか・・・。」

祈咲ちゃんは御門一族のお嬢様の一人。

小さなころからお嬢様として育っているから、たまに少し強すぎるところがあるけど、なんだか憎めない性格をした、女王さまのような子。

160ほどの私と違って172センチも身長がある、スタイル抜群の美女。

そして、緋凰と出会ったころからの、私の大切な大切なお友達。

今はお昼休みで、祈咲ちゃんと一緒に、中庭の芝生で昼食をとっている。

春の日差しが暖かくて、心地いい。

緋凰には悪いけど、私は日差しがだめなわけじゃないから、おひさまの下に出れるのは、ちょっと嬉しい。

ここまでは、どうにか耐えたけど・・・。

今日あと残り、もつかしら・・・。

そんなことを思いながら、今日の朝のことを祈咲ちゃんに話した。

「・・・緋凰のやつ、何考えてんの!」

そういうと祈咲ちゃんは今にも緋凰に殴りかからんばかりに思いっきり怒鳴った。

それはもう、周りの子たちがびっくりするほど、勢いよく。

ああ、やっぱり。

祈咲ちゃんは、昔からすごく私のことを大事にしてくれるから、私に何かあると、それが緋凰のせいでなくても、すぐに緋凰を殴りこみに行こうとする。

嬉しいけど、ちょっと複雑・・・。





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