香る紅
6時限目も終わって、やっと帰れる時間。

今は下駄箱。

織葉の所に行くのに、どうしても一人で行きたくて、実紘を撒こうとした。

だって、一緒に行ったら、実紘は私のそういうの止めるから、緋凰のこと怒鳴れない。

ここを出ればもう、撒いたも同然。

そこでぽすっと突然できた壁にぶつかった。

「・・・え?」

こんなところにこんな柔らかい壁、ないはずなのに?

なんて暢気なことを考えてたら、面白そうな声が降ってきて、肩をホールドされた。

「はい、忍者みたいなことを御苦労さま、祈咲。」

「・・・!実紘・・・!」

日々、常時面白そうな実紘には、ほんとに感心してしまう。

「織葉のとこに行きたいって、素直に言えばいいのに。一人で行ったら、また迷子になるよ?」

・・・この、極度の方向音痴、どうにかならないかな・・・。

緋凰みたいに陽に弱いのも困りものだけど。

ヘタすれば、一人じゃ日常生活も送れないよ・・・。

この頃学校もやっと迷わなくなってきたのに。

「違うわ。緋凰に、一言いいに行くのよ!」

頭の中に、4時限目、織葉が倒れた時のことがフラッシュバックされる。






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