香る紅
ここ、どこかなぁ?

あったかくて、紅茶のいいにおいがする。

本当は目をあけるほど元気はなかったけど、なんだか気になった

すると、そこは私の部屋だった。

いいにおいを漂わせていたのは、私の好きな銘柄の紅茶。

お供のお菓子まで、しっかり準備ずみ。

その時、右手の不自然に気がついた。

右手だけ、すごくあったかくて、気持ちいい。

「織葉・・・?」

呼ばれて視線だけそちらに向けると、心配そうな顔をした緋凰。

右手があったかいのは、緋凰が握ってくれているからだった。

何もしゃべらず、視線だけしか動かさない私を、余計に心配になったのか、緋凰の手が私の頬に伸びてきて、包み込んでくれる。

なんだか、幸せな状況だな・・・。

この頃の緋凰は、機嫌が悪くて・・・そろそろ、潮時かな、なんて、思っていたくらいだから。

これは・・・夢、かな。

甘えた私が自分に見せる、自分に都合のいいだけの夢。

・・・それなら、緋凰が笑ってれば、一番幸せなのに・・・。

他のもの、どうでもよくなっちゃうくらい幸せなのに・・・。

「まだ、寝てろ。もう少ししたら、起こすから」

頬を包んでくれていた手が、馴れた手つきで、子守歌代わりに私の頭を撫でてくる。

ここで寝たら、この夢は終わりよね・・・。

そう考えたら、まだ寝たくなんかなかった。

もっと、この夢の中にいたかった。

緋凰の笑顔を見たかった。

「緋凰・・・笑って・・・?」

どうにか言ったその言葉が、緋凰に届いていたのかどうかは疑問。

けど。

「寝ろ。」

緋凰は笑ってくれたのを確認したら、安心して、寝てしまった。






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