香る紅
春の日差しが、アンティークな窓を通って、暖かに部屋に降り注いで来る。

ああ、今日はいい天気。

そう思いながら同じくアンティークっぽい落ち着いた茶色のカーテンを閉めた。

この頃緋凰、機嫌悪いし・・・これだけお天気が良くなっちゃうと、今日の機嫌は最悪かもしれない。

そんな風にカーテンの隙間から外を見てぼうっとしていると、後ろからいつのまにか部屋に入ってきていた緋凰に腕を引っ張られた。

「織葉、『食事』。早くしろ。」

案の定、緋凰の機嫌は最悪らしい。

・・・どうか、たくさんとられませんように。

これはもう神頼みをするしかない気がする・・・。

眠そうでだるそうな緋凰は、機嫌が悪くなかったら、きっと可愛いのに・・・。

というか、本来寝ざめすっきりの朝型なのに。・・・私と違って。

「遅ぇ、織葉、早くしろって言ってんだろ。」

きつく睨みをきかして言われてしまった。

無愛想なのも、もう、なれてしまった。

緋凰を無愛想にしてしまったのは、何だろう。

昔は、愛想はいい方じゃなかったけど、あんなにやんちゃ坊主みたいだったのに。

強引に腕を掴まれて痛いくらいに腕に力を込められる。

・・・いつも以上に機嫌が悪い・・・?

まぁこれくらいはいつも自己中心的な緋凰に付き合ってるから慣れっこだけど。

緋凰は邪魔そうに、乱暴に、腰まである私の長いウェーブのかかった髪をバサッと左側によけた。

いつも、緋凰は右側からしかとらないけど、何か理由でもあるのかな?

ぼうっとそんなことを考えていたら、お腹を空かせた緋凰の顔が早くも近付いてきて。

「!!」

条件反射で緋凰の整いすぎた顔を見ると、瞳の色が金色に変っていたから、身を固くする。

緋凰の瞳の色が変わるのは、感情が高ぶったとき。

つまり、興奮してたり、怒ってるとき。

・・・やだ、私、やっぱり何かしたんだわ。




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