香る紅
男にはない痛みでずきずきするお腹をなでながら更衣室に入ると、そこに織葉の姿はなかった。

不思議に思って先に体育館にいた実紘と緋凰に聞いてみても「まだ来てない」。

幼児じゃないんだから、たかだか少し遅れたくらいでとは思ったけど、なんだか嫌な予感がしたから。

私の勘は、自分でも嫌なくらい当たるから。

クラスの女の子たちに聞きまわると、ようやく、「織葉?なんか教室の前で、織葉の信者な男の子に連れてかれてたよ?」。

えええ!?

ほら、嫌な予感は当たってしまう。

織葉は自分じゃ全く気づいてないけど、あのルックスにあの性格だから、学校の中には織葉の信者がいる。

だって、西洋人形みたいに白くて目がくりくりして大きくて唇も赤くて!日本人形みたいにつやつやした黒い髪がきれいにウェーブしてて!しかもふにふにやわらかで、あんなに優しいのよ!

御門一族の親戚たちはだいたいルックスがいいし、御門一族とパートナー契約をしてるやつらも血を吸われることで新陳代謝でも上がるのか、レベルが高いから、数は多くなくとも信者がいることは確か。

でも、パートナー契約をしているカップルはだいたい、付き合ってるから。

一般生徒はあきらめているけど、緋凰と織葉は違う。

二人とも付き合ってるとは言っていないせいか、告白して無理やりにでも思いを遂げようとする馬鹿な奴らが絶えない。

緋凰は自分で適当にあしらってるみたいだけど、織葉はそういうことを分かってないのだから、対処のしようがない。

できる限り私が追い払ってきたけど、ああもう、こんな短時間に連れてかれるなんて思ってもみなかった!!



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