香る紅
「緋凰、ごめんなさい。もう怒らないで。お願い。」

それはもう、謝ることを本能に刻み込まれているみたいに、謝った。

こうなった緋凰からとられるのは、とられすぎるから、危ないから。

感情の高ぶりのままに理性が飛んでしまいやすいから。

獣になってしまいやすいから。

緋凰は私の言葉に一回顔を放して、金色の瞳のまま、不思議そうな顔をした。

「お前、俺に怒られるようなことした覚え、あんのかよ。」

「わかんないけど・・・。でも、知らないうちに緋凰に嫌な思い、させてるかもしれないから・・・。」

「・・・・・・。」

一瞬間をおいた後、緋凰の顔が歪んだ笑みを作る。

「へぇ?そういう自覚はあんのな。」

この、歪んだ表情が、嫌い。

私を責めるのはいいけど、自分まで責めて、傷つけているようで。

昔はこんな顔しなかったのに。

やっぱり、私が、全ていけないのかな。

私が、緋凰を苦しめているのかな。

『グイッ』

後頭部を掴まれ引き寄せられて、一回は遠くなった緋凰との距離がまた縮まって、緋凰の顔が目の前にきた。





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