香る紅
何よりも、誰よりも、織葉が大切だった。

織葉の両親が亡くなった時にした、約束。

織葉がどう思っていようと、一生守っていくつもりだった。

約束から時が過ぎていっても、綺麗になっていく織葉が変わらず隣にいてくれることは嬉しかったし、誇らしかったし、織葉に誇られる俺であろうと思えた。

織葉が甘えてくれたりする度、調子に乗って。

そんな、二人だけの世界が続けばよかったのに。

中学になったころから、思春期の馬鹿どもが目を織葉に目をつけ始めた。

織葉は確かに綺麗で、優しかったから。

織葉を取られたくなくて、織葉は俺のモノだ、そう言ってしまいたかった。

けれど、約束は所詮、子供の約束だということに、俺は気づいてしまった。

心の中で、織葉の気持ちを無視して俺のものだ、などと宣言していいのかという迷いが渦巻いて。

しかも成長期だからか、織葉から奪う血液の量が増えたらしく、もともと体が強いわけじゃない織葉はいつも貧血気味になって。

それを見ていたら、これ以上、俺が織葉を縛ることは許されないんじゃないか、と思った。

けれど、やっぱり誰かの手に渡っていくことなんて、許せるはずはなかった。


この前だって、織葉から血を取りすぎたのは、ほぼわざと。

前日に、織葉のことをイイって言ってるバカなヤツらがいて。

織葉を、学校の馬鹿な奴らに触れさせたくなくて、見せたくなくて。

できることなら、織葉をずっと家の中に閉じ込めて、自分だけのものにしたい。

織葉を自分のものだと宣言できなかった腹立たしさと一緒になってぐちゃぐちゃになって、気づいたら我を忘れて、織葉からとりすぎていた。




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