香る紅
体に入っていた力は抜けて、それを感じたのか、緋凰の腕にまた力が入って、動けなくなる。
「血を取りすぎたのは、わざとやったことだ・・・。」
「・・・え・・・?」
驚くことを言われたり、話が飛んだりして、覚醒して時間のたっていない頭ではうまくついていけない。
わざと?
わざとそんなことをするほど、それだけ、私がいやだったって、こと・・・?
暗い考えにとりつかれだしたときに緋凰から降ってきた言葉は、「織葉を独り占めしたかったんだ」。
予想外な理由を最初に話した緋凰は、普段とは比べ物にならないくらい饒舌に語りだした。
「昔の約束でも、織葉が隣にいてくれることが嬉しくてしょうがなかった。けど、この前みたいな馬鹿が織葉に勝手によってきやがって・・・!」
『この前みたいな馬鹿』のあたりで何かを思い出したのか、さらに腕に力が入る。
初めて、緋凰から束縛の言葉を聞いた。
昔の「約束」以来、緋凰が私を束縛するような言葉を言ったことはなくて。
他のことは全部、他人の意思が多かったから。
「隣にいさせて危ない目に合わせるくらいなら、家の奥に、大切にしまっておいた方がいいって、思った。織葉が隣にいないの、俺が我慢してる方がずっとマシだって」
ちゃんとした理由があったんだ。
『私』がいやなんじゃなくて、私に声をかけてくる『男の子』がいやだったんだ。
その理由に、胸がぽわっとあったかくなる。
・・・と同時に、なんだかおかしくなってきた。
変なの、どんなことがあったって、知らない男の子に声をかけられたって、知らない女の子にいじめられたって、具合が悪くなったって、緋凰の隣にいたいのに。
緋凰の隣以外、いるところはないのに。
独り占めも何も、私の中には、緋凰しかいないのに。
緋凰がいれば、何が起こっても、なんでも大丈夫なのに。
笑っていられるのに。
「緋凰、あのね・・・」
けど饒舌緋凰は、私にしゃべらせてはくれなかった。
「悪かった。許してくれ。織葉が許せないって言うんだったら、何度でも謝る。なんでもやる。なんでもする。」
「え、と・・・。」
*
「血を取りすぎたのは、わざとやったことだ・・・。」
「・・・え・・・?」
驚くことを言われたり、話が飛んだりして、覚醒して時間のたっていない頭ではうまくついていけない。
わざと?
わざとそんなことをするほど、それだけ、私がいやだったって、こと・・・?
暗い考えにとりつかれだしたときに緋凰から降ってきた言葉は、「織葉を独り占めしたかったんだ」。
予想外な理由を最初に話した緋凰は、普段とは比べ物にならないくらい饒舌に語りだした。
「昔の約束でも、織葉が隣にいてくれることが嬉しくてしょうがなかった。けど、この前みたいな馬鹿が織葉に勝手によってきやがって・・・!」
『この前みたいな馬鹿』のあたりで何かを思い出したのか、さらに腕に力が入る。
初めて、緋凰から束縛の言葉を聞いた。
昔の「約束」以来、緋凰が私を束縛するような言葉を言ったことはなくて。
他のことは全部、他人の意思が多かったから。
「隣にいさせて危ない目に合わせるくらいなら、家の奥に、大切にしまっておいた方がいいって、思った。織葉が隣にいないの、俺が我慢してる方がずっとマシだって」
ちゃんとした理由があったんだ。
『私』がいやなんじゃなくて、私に声をかけてくる『男の子』がいやだったんだ。
その理由に、胸がぽわっとあったかくなる。
・・・と同時に、なんだかおかしくなってきた。
変なの、どんなことがあったって、知らない男の子に声をかけられたって、知らない女の子にいじめられたって、具合が悪くなったって、緋凰の隣にいたいのに。
緋凰の隣以外、いるところはないのに。
独り占めも何も、私の中には、緋凰しかいないのに。
緋凰がいれば、何が起こっても、なんでも大丈夫なのに。
笑っていられるのに。
「緋凰、あのね・・・」
けど饒舌緋凰は、私にしゃべらせてはくれなかった。
「悪かった。許してくれ。織葉が許せないって言うんだったら、何度でも謝る。なんでもやる。なんでもする。」
「え、と・・・。」
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