香る紅
美詠子さんと秋野さんを筆頭としたうちの人たちには、特に何を言われるでもなかった。

けれど、しこたま食べさせられたり、やたらとかまわれたり、もういやってくらいベッドにはりつけにされたりと、嬉しいけど、怒られるよりも居心地の悪い行動を取られた。

事が大事になるのを恐れたらしくて、今回のことは、緋凰と私の屋敷内でとどめられて、でも、祈咲ちゃんや実紘くんだけには、やっぱり伝わっていたらしくて、実紘くんには諭されて、祈咲ちゃんには泣かれてしまった。

「だから、自分の思ってることはちゃんと言えって言ったのに・・・。」

「織葉のバカー!!緋凰がだめだったら、私の所に来ればいいじゃない!私を捨てて死のうとするなんて、ひどすぎるー!」

2時間くらい、離してもらえなくて、緋凰の機嫌が悪くなったほど。

二人には怒られると思ってたって言ったら、緋凰は、

「織葉は怒られることはねぇんだよ。・・・その代り俺がしこたま怒られた・・・。」

なんだかげんなりして、そのまま抱き寄せられた。

あ、珍しい。
「へんなの、緋凰が、あの二人に怒られるってだけでも珍しいのに、それでしょげてるなんて」

あんまり珍しくて、ふふ、と声を出して笑うと、緋凰の手が、頬を包み込んでくれた。

「そうやって、笑っていろ。そうすれば、俺は、織葉を守る」

「・・・!」

「織葉の笑顔、好きだぞ?何よりも綺麗だ」

「―――っ!」

そんなことを優しい顔で真剣にいうものだから、恥ずかしくて、顔があげられなくなってしまった。



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