Halloween☆の集い
「勝負? かけっこならアタシ負けないわよ」
「オレは相撲ならしてもいいよ」
「違うわよ! 魔法よ、まほう、マジックよ!!」
「あぁ、手品ね。いいよ」
「そんな温いものじゃなくて──」
「手品でいいんじゃない?」
リタの奴、人間なんかに一杯喰わされるとはな。
案外面白い勝負になるかもね。彼女だけは、面白くなさそうな顔だ。
「ハルフォード氏、ジャッジお願いします」
「わ、私は貴様らに、勝算はやらんぞ」
そうでした。
「貴方では、公平ではないな」
「私がジャッジするわ」
幾日ぶりかにみる、天使のような微笑みを投げてくれたのは、キャサリンだった。
試験に合格をしたとはいえ、見習い上がりの彼女の魔法は、人間が生み出した『手品』と良い勝負をしている。杖を一振りするリタの魔法とは違って、呪文もないから先が読めない。
魔女のプライドもあるのだろう。こんなに真剣な彼女を見たことがない。
どのくらい続いたのか、リタの表情に、疲れが見えてきた。それに引き替え、彼らは楽しそうだ。
勝負あったかな。
「お姉さん、ボクもうネタがないよ?」
「私は、まだまだ出せるわよ?」
当たり前だ。ここまで真剣勝負になるとは思わなかったけど。
「披露する手品がなくなった為、リタさんの勝ち」
キャサリンはリタの手を取り、星に向けて高く掲げた。
「リタさん、貴女の望みは?」
「いいこと? アップルパイは私の物よ!! それと、私たち、魔女やヴァンパイアはこの世に存在するの! 忘れないでよね!!」
リタは、彼女の手を振り払い、子供たちに記憶を植え付けた。
「魔女は分かっけど、ヴァンパイアなんて何処にいるのさ」
俺って、そんなにも存在薄いわけ?
「此処にいる。ハルフォード氏、ありがたく頂戴するぞ」
俺はマントを翻し、キャサリンの首筋に甘噛みをして、彼女を抱いたまま空に昇った。
fin
― 報告 ―
俺とキャサリンは、今日も暇な喫茶店で珈琲を入れている。
彼女の名前が、鈴木キャサリン-エマーソンに変わったのだ。
これからもヨロシク頼む。
2009,10,18
花穏