千日紅が咲いている
「そうか…そうか!」


 口が笑っていた。

 でも目はなぜが閉じていた。

 なんだが変な感じだった。


 連れてこられたのは、テントも片付けられていつもの風景になった運動場だった。

 胸は中から何度もノックされていた。

 期待で頬が緩みっぱなしで、まだかなまだかなとウキウキしていた。

 ヤスばっかり見ていたから気づくのが遅れた。


「連れてきたよ」


 ヤスの言葉に、私はえ?と顔を向けた。

 大輔が立っていた。

 背を向けていた大輔が振り返る。

 その左手に握られた、白いはちまきが揺れていた。

 意味がわからなかった。

 これが何を意味しているのか分かっていたのに、分かりたくなんかなかった。

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