「彼」

私は、気になってたことを聞いた。


「なんで先生、送ってくれたの?」


(何で抱きしめたの?)



それは聞けなかった。



先生は、


「あー帰り遅かったからなぁ。危ないしなぁ。」


ゆっくりと話す。




私は、少しイライラして、


「それだけなの?じゃあ、なんで・・・」


言いかけて口をつぐむ。




「お前さ、まだアイツのこと好きなんやろ?なんでいかん?」


元カレ・・・?


あいつのことはもう想ってないよ。



「そーなんか?」

「俺な、来年から違う学校の先生になるって知ってた?」


え?

知らないよ?



「ほんとはな、それからにしようと思ったんや。」




手がふるえる。



「今はな、一応、教科担任でもあるしな。」



胸が・・・痛い。

何を言おうとしてるの?


なぜだか苦しくて。




受話器を握りしめたまま。



目を閉じた。
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