「彼」
私はまったく集中出来なかった。
時折、先生が側に来て教える度、
余計に集中出来ない自分。
気が付くと、部屋には私一人しかいなかった。
「英語、嫌いか?」
ふいに聞かれて。
嫌いだよ、
そう答えた。
先生は笑って、
「それはまずいなぁ」と。
私の通った学校は、一年生のうちに、進路を決める。
それは、大学、短大、といったおおまかなことじゃなくて、
具体的に行きたい大学を決める。
私が決めた進路先は、
試験の中でも英語に重点がおかれてて。
本当なら頑張らなくちゃいけなかった。
「おまえが英語出来るようになるには、好きになるのが1番なんだけどなぁ」
先生は困った顔して、つぶやいた。
私は、進路とか、勉強とか。
そんな話を普通にしてる先生に苛立って。
「あの日のこと、電話はなんだったの?」
そう聞きたいのに聞けない自分に苛立って。