猫は太陽が好きなんだ
「太陽?」

太一が首を傾げる。
夏樹は少し考える。

「やっぱ話すのやめた!」

「は!?」

夏樹は少し、きつく太一に言い放った。

「自分で、行動で示さないと…希望なんて見えねぇぞ!」

夏樹の言葉が太一には重くのしかかってきた。

太一が黙り込むのを気にしながら夏樹は続けた。

「行動で…示すんだ。負けたくないって気持ちを持つんだ。」

「…負けたくないって気持ち?」



夏樹は太一を見つめる。
尻尾を軽く振り、こう言った。


「負けたくない気持ちを持ってたら、頑張るって気になれるんだ。」


夏樹の言葉を聞いた太一は少しためらいながら夏樹の頭に手をのせた。




「わかったよ。俺、負けない。」



夏樹は太一に“教室戻れよ”と言い残して学校を後にした。






「……何偉そうな事言ってんだ…俺は。」


理子の家へと帰る。
一歩一歩進みながら夏樹は完全に後悔していた。


段々距離が遠くなり小さくなる学校を見つめて呟いた。








「死ななきゃ良かった……。」





少し傾いた太陽が夏樹の影を大きく写した。


心の中に居る人間の自分が確かに泣いていた。
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