素直にカエル ~先生の隣で~


頬に当たる生温い風…


ほのかに潮の香り…


先生が連れてきたのは海だった…


「…さっき、吉岡のお母さんに聞いたんだ」


そっと隣に立ち、海を眺める先生…


「そっか…懐かしいなぁ」


私も同じように、暗い海を眺めた…



この海は、私が小3の夏休みに、初めて海に来た場所…


お父さんとお母さん…そして私の3人でこんがりと焼けるまで遊んだ…


『来年も絶対来ようね!』ってお父さんと約束してた…


でも…


叶わなかったんだよね…


それ以来…この海は来ていない…


お父さんに関係するものから自然と離れてたのかもしれない…


お母さんも…


私も…




「ほら…もう少し行こ?」

「暗くて見えないよ…」

波の音はするけれど、真っ暗な海はとても怖い…


「なんだよ…怖がりだなあ…」


そう言って先生は…



私の右手をつかみ歩きだした…




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