時計仕掛けの宝石箱
螺旋状に絡み付いた白銀は徐々に光を増していき、何かが爆ぜる音がトーマの周囲に響き始めた。





「‥‥<闇黯輪・絶>(アンコクリン・ゼツ)!!」





一瞬でトーマの腕輪が伸び、彼の前に巨大な円を描き出した。

直径が約二メートルの銀の枠に幾何学模様が浮かび出し、輪の内部が黒い生き物のように蠢き出す。

幾つもの漆黒の渦が絡み合い、悍ましい雰囲気が室内に這い出てきた。

「さぁて、これで準備万端!‥始めるよ」

楽しそうに告げたトーマに従い、白銀の輪が彼の前方の大気を吸い込み始めた。

みるみるうちに勢いは強くなり、壁に掛かっていた絵画やベッドのシーツ類が輪の中に消えていく。

だが、彼が消し去りたいモノは、未だ床にへばり付いている。
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