時計仕掛けの宝石箱
「‥あ~、やっぱりアレじゃ重量があるか‥。じゃ、もうちょい強くするか」

「‥おい、トーマ」

「分かってるって。そう急かさないでよ。手元、狂っちゃうかもだろ」

言葉とは裏腹に笑顔を作って振り向く。その途端、輪の吸引力は跳ね上がった。

部屋ごと吸われそうな凄まじさに、ついに獣鬼の躯も重力から解き放たれた。

巨大な皮袋は、トーマが創り出した<闇黯輪・絶>の中へと掻き消えた。



あまりにも呆気ない獣鬼の消失に、ラディオルは口笛を鳴らした。

「流石は我等が誇る<深藍の銀輪>(シンアイ ノ ギンワ)だな。‥前見た時より、大分安定したな」

輝く輪を腕に呼び戻したトーマは「まぁね」と口元を上げた。
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