時計仕掛けの宝石箱

薄く、垂れ幕のように掛かった黒いサテンのカーテンが、蜘蛛の糸を思わせる不規則な構成で小さな部屋を彩る。

不気味な雰囲気の室内に、一人の黒人女性がパソコンの前に座っていた。

小さめな顔に不釣り合いな大きい眼鏡のズレを、人差し指で押し上げて直す。

カタカタとリズムを創る彼女の滑らかな指が、ただひたすらに文字の羅列を並べていく。

そんな止まった世界の中で、低く、唸るような音が反響し始めた。

彼女は一瞬息を飲み、震える息を吐く。

途端に、彼女が先程まで動かしていたノートパソコンの画面が赤く光を漏らし出した。

<spatial be distorted>

‥―空間の歪み―



「‥幹部達が、帰ってくる‥」

ぽつりと口にした言葉には、俄かに畏怖が混ざっていた。