時計仕掛けの宝石箱
「あ‥。大、丈夫‥です‥」

「ごめんなさい。恐がらせてしまったわね」

「いえ、そんな事‥!‥大丈夫です」

温かい手がサーシャの頬に触れ、優しく撫でる。

バクバク脈打つ心臓と同様に、サーシャの心も乱れ、高鳴っていた。



‥正直、驚いていた。



最高幹部の少女が、彼女達にとっては末端の一組員に過ぎない自分の身を、案じてくれているのだから。

「‥‥ルナ」

「っ‥しかし‥」

「ルナ、私の中には三度目は存在しないわ」

「‥‥」

美女が僅かに下唇を噛んだ瞬時に、サーシャの周りに在った空気が揺らめき、普段のそれと変わらぬモノになっていた。

重力が変わったような、不思議な気持ち。

サーシャはようやく深く息を吸う事が出来た。
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