時計仕掛けの宝石箱
「ルナの事。あいつ、悪い奴じゃないんだけどさ‥。‥なんつーの?実力とかで人を見る所があるから‥。

‥あ、別に君が悪いんじゃないんだけどね。
大丈夫だった?」

「はい。‥ありがとうございます」

「いや、気にしないで。

じゃ、またそのうち‥どこかでね」

その言葉が終わった時には、既に彼の姿はなかった。

サーシャはこの時まで、長い間勘違いをしていたのだと、はっきり分かった。

上の者は自分の保身で精一杯で、決して彼らのために汗水を流す部下の事なんて、顧みる事はないのだと、そう思っていた。

実際、そういう者も見てきた。

けれど、全ての人がそうであるわけではないと、考えを改めた。
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