時計仕掛けの宝石箱
イタリア・ヴェネツェア某所。
少年が一人、眠たそうな目を擦って船着き場の傍らにあるベンチに腰掛けていた。
道行く人々が、彼を振り返り、興味の眼を撫で付ける。
その理由は、少年そのものにあった。
十四、五くらいの少年の深海を思わせる髪が風の中で遊ぶ。
無邪気な光を宿す淡い水色に、少し涙の山が出来た。
この妙な髪色は彼が自分で髪を染めたものではない。生まれた時からこの色なのである。
当時は、病院や両親が精密検査を受けさせたほど驚愕していたらしい。
少年はそんな眼にずっと晒され続けたため、周囲の態度は気にも止めなかった。
欠伸を一つ漏らし、少年は再び目を擦った。
普段何もない休日は、昼過ぎまで寝ているので、まだ目が覚めきっていないのだ。
と、少年の眼前が翳った。