時計仕掛けの宝石箱
「先程トーマが言ったように、我々シェレスは<扉>の番人であり、<扉>の変わりにセカイを管理する者です。

そのために、シェレスはセカイの生物を傷付ける事はできません。

‥自分が傷付けられさえしなければ、ですが」

「!‥まさか‥」

身を乗り出したハロルドは心なしか、顔色が青く見える。

「はい。基本的に、シェレスは人間から生まれます。

‥しかし、人間は自分達と違う存在を拒絶する事があります。

それもかなりの高確率で。

この事は私達の中でも周知の事実です」

「‥もしその仮説が正しいとしたら‥。

‥可能かどうかは兎も角、人間への復讐っていうのは納得いくな」

得心して呟くラディオルの袖の裾を、トーマは小さく引いた。

「ん?どうした?」

「ゴメン、よく分からないんだけど」

「は?」

「‥トーマ、いいですか?」

割って入ってきたルシャアナに、ラディオルは助かったと言わんばかりにトーマを押し付けた。

‥本人は気付いていないが。
< 66 / 195 >

この作品をシェア

pagetop