時計仕掛けの宝石箱
聞こえないようにしたつもりだったのだが、老教師はこちらを向いて冷ややかな目で睨んでいる。

どうやら耳はまだ健在らしい。

「そんなにつまらないか?ここは重要な所なんだがなぁ‥。

お前にとっては退屈でしかないのかぁ、三鷹」

此処ぞとばかりに嫌味を言う教師を一瞥して、響也はノートに視線を戻す。

「いえ、何でもありません。すみませんでした」

あっさりと引き下がった響也の態度がまた気に食わなかったのか、目の上の血管がピクピクしている。

だが引き下がられては文句も言えず、分かれば良いとか何とかブツブツ言いながら、黒板に向き直った。

それを確認してから再び窓を見つめる。

教師達に気に入られていないのは百も承知だ。

それでいて中々の成績をとっているので、より反感を買っているのも、知っていた。
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