愛 離~求め続けたモノ~
友人や職場の人に突然帰郷する事になったと、別れの挨拶をしていても。
考えていたのは…、思っていたのは、ただ1人のオトコだった。
ずっと、ずっと、頭から離れなくて、今だって苦しくて仕方ない。
だけど…、もう忘れなきゃいけない・・・
グッと力を入れて、いつも利用する新幹線の改札口へと向かう。
事前に購入しておいた乗車券を、カバンから取り出そうと一旦立ち止まったけど。
「美波」
「っ――!」
私の手はそのまま、金縛りにあったようにピタリと止まってしまった。
「なんで・・・」
その愛しい声のした方を見れば、バチッと視線がぶつかって。
「待ってたからに決まってんだろ?」
「なん、で…?」
同じ言葉を反芻するしか出来ない私の瞳は、ゆらゆら揺れ始めた。