原は天高くに在り【短編】
「…私などでは、かの太陽神には遠く及ばないけれど…」
唐突な言葉にスサノヲは不思議そうに近付いて来たクシナダヒメを見る。
細く白い十の指は、逞しく武骨な一つの拳を弱々しくもしっかと包み込んだ。
「貴方様が気持ちに走ってしまうなら、私は傍でその腕を引く事ができます。こうして貴方様の雄々しい拳を包み込むこともできます」
ずっと届かなかった、母も、姉も。
遠くて、崇高で、触れて、確かめたいのに、安心したいのに出来ない存在だった。
こんな温もりは、しらなかった。
今、この剥がそうと思えば簡単に剥がせる手を、拒もうと思えば簡単に拒める温もりを失う事が切に恐い、と、感じた。
「こうして、温もりを共にして、哀しみを溶かす事も…できます」
悲遇のこの娘はきっと、それこそスサノヲが声をかけてきたその時から、過酷な自分を嘆くのも忘れその哀しみと自責にくれる瞳に強く惹かれてしまったのだ。
どんなことであっても、自分だけはスサノヲを許す事の出来る者だと、そう思った。
唐突な言葉にスサノヲは不思議そうに近付いて来たクシナダヒメを見る。
細く白い十の指は、逞しく武骨な一つの拳を弱々しくもしっかと包み込んだ。
「貴方様が気持ちに走ってしまうなら、私は傍でその腕を引く事ができます。こうして貴方様の雄々しい拳を包み込むこともできます」
ずっと届かなかった、母も、姉も。
遠くて、崇高で、触れて、確かめたいのに、安心したいのに出来ない存在だった。
こんな温もりは、しらなかった。
今、この剥がそうと思えば簡単に剥がせる手を、拒もうと思えば簡単に拒める温もりを失う事が切に恐い、と、感じた。
「こうして、温もりを共にして、哀しみを溶かす事も…できます」
悲遇のこの娘はきっと、それこそスサノヲが声をかけてきたその時から、過酷な自分を嘆くのも忘れその哀しみと自責にくれる瞳に強く惹かれてしまったのだ。
どんなことであっても、自分だけはスサノヲを許す事の出来る者だと、そう思った。