原は天高くに在り【短編】
 松明の炎が轟々と燃える。
 鏡と玉飾りのついた賢木が掲げられ、祝詞の声が響き渡る。
 中心を囲うように座る神々は楽しげに雑談などをしている。

 アマノタヂカラヲはアマテラスの閉じこもる塞がれた岩戸の前に立って、宴を見守る。



 やがて大きな歓声と共に、軽装のアメノウズメが大きな桶を携えて現れた。


 囃し立てる群集に囲まれ、アメノウズメは桶を伏せると妖艶に微笑んでその上に乗り、やがて激しく踊り出した。



 桶を激しく踏み、たわわな胸をはだけ、しなやかな腰が群集に曝されることもいとわず彼女は美しい笑みを振り撒きながら乱舞する。

 辺りには笑い声が満ち満ちていた。


 そして、その大きな笑いは空気を揺るがし…




おお、高天原が……




 この天岩戸のある高天原までをも揺るがせる。

 揺れる、揺さぶる、笑い。
 アメノウズメはただ懸命に、群集のために、アマテラスを想い、乱れ舞う。


 皆、彼女に届けと、高天原を揺らした。
< 17 / 22 >

この作品をシェア

pagetop