原は天高くに在り【短編】
「何故、泣いている……?」
その声に顔を上げたのは、山の神の息子アシナヅチとその妻テナヅチ、そしてその二人の間に出来た子らしい娘。
涙ながらに聞いた話によると、毎年娘をさらう大蛇ヤマタノオロチの今年の狙いがこの娘、クシナダヒメなのだと言う。
「そいつがいなくなれば…」
涙は、消えるだろうか―…
1番笑って欲しかった人が、目の前のクシナダヒメに重なった。
「我が名はスサノヲ――かのイザナキを父に、アマテラスを姉に持つ者。ヤマタノオロチを退治しよう。アシナヅチ、手伝ってくれ」
三人の瞳に僅かともった光に、スサノヲは力を得た。