□■君のこと好きなんだ。■□
メイドさんたちに座るようにせかされ、鏡の前の椅子に腰をおろした。
『緑色のドレスかぁ…どんなのがいいかなぁ』
独り言のようにそう言いながら、いくみが化粧箱をあさる。
『ちょっと、あたし化粧なんかしないってば…』
『いやぁ、でも記念すべきsweet 16だょー?
大人への第一歩ってことで、お化粧ぐらいしなくちゃ。』
『…て、まさかあんたがやるの?』
『大丈夫大丈夫、ぼくこう見えてもメイクさんの免許もってるし。』
『そういう問題じゃなくて!ちちょっと…』
いくみがひかりのアイラインに黒を入れようとしたので、ひかりは目をギュっとつぶって拒んだ。
『やっ…だめっ!!ほんとにやめて、無理!!』
『なんでぇ?』
『こわぃ…もん…』
いくみは『ぅ~ん…』と考えて、ひかりの前に向かい合うようにしゃがみこんだ。
しっかりと彼女の瞳を見据えて、目を離さずに言った。
『お嬢様、あなたは今、海の中にいまぁす。』
『…は?』
『目閉じて、想像して?』
『ちょっとあたしそんな時間…』
『いいから。』
言われるがまま、ひかりはしょうがなく目をつぶった。
瞼の裏に海中の青を想像した。