□■君のこと好きなんだ。■□
『………』
いくみは少し考えてから、ひかりの上から退いて、立ち上がり、電話に出た。
『はぁぃ、もしもしー?』
その隙に、ひかりは鍵を開けて部屋から逃げ出した。
『………。』
ああいう経験がまったくない16歳のひかりは、今までに男性を怖いと思ったことはなかった。
たった1,2分の出来事だったけど、ひかりには大きな衝撃を与えた。
こわかった…………-------。
ひかりは階段に座り込んで肩を震わせていた。
太ももにはいくみの手の感触が、首筋には唇の感触が残っている。
男の人…怖いなんて、思ったことなかった…。
いくみの力強い腕、太ももに触れた大きな手、それから甘い髪の匂い…
男の人…なんだなぁ。あいつ…。
お父さん以外の、また違った男の人なんだ…。
小学生の頃から私立の女子校に通っているひかりは、まったくと言っていいほど家族以外の異性との付き合いややり取りというものを持たない。
手が震えているのがわかった。
ため息をつくと、どこからかもどかしさが湧いてきて、ひかりは立ち上がった。
こぶしを握りしめ、
『ぜーったいに許さん!!藤宮いくみ、死ねー!』
見事な立ち直りぶりを見せた。