□■君のこと好きなんだ。■□
すると、まるで想いが届いたように、右上のインターホンっぽいものが声を発した。
『すみません、気づきませんでしたぁ!!
ぇぇっと、執事としてお越しになった……えぇっと…』
女の人の声だった。
そうとうドジなんだなこの人は。
『…藤宮いくみ、です』
とカメラに向かって微笑んでみた。
インターホンは、
『ぁ、そうでしたそうでした、藤宮様!
ぇぇっと、今開けますんで、どうぞ中へ…』
ガコン、と小さく音がして、
ぼくの身長の4倍くらいある門が、ゆっくりと開いた。
中に入ろうとすると、またインターホンが喋った。
『…ぁっ、すみませんけど、そのおピアノも一緒によろしくお願いしますぅ』
ぁ、そーっすか。
ぼくは重たい純白グランドピアノを後ろから押しながら、門の内側へ足を踏み入れた。