□■君のこと好きなんだ。■□
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ひかりは2階の廊下をズンズンと足音を立てて歩いていた。
行き先はもちろん父親の書斎だ。
一応ノックをして、バンッと勢いよくドアを開いた。
そこには、書類に目を通している父親がデスクに座っていた。
彼はドアの音にビクっと反応して、顔を上げる。
『ぁぁ、ひかり!お誕生日おめでとう。
今日から16歳だなぁ。』
『ありがとう、でもそうじゃなくて、お父さん!』
『なになに…どうしたんだぃ、ひかり。』
父親はメガネをはずして眉を上げた。
『あの、さっきグランドピアノが無事に届いたんだけどね?
その……一緒についてきた、あの、茶髪は何??』
名前ももう頭から消え去っている。
遠慮がなくて、天然バカで、タメで、なんの敬意も見せない、そして留めが"変態"とくれば、名前がなんだったかなんて吹っ飛んでしまった。
が、父親はキョトンとした顔で。
『何って、ひかりが欲しがっていた執事さんだよ。
若くて、力持ちで、頼りがいのある執事さんだよ。』
ひかりは開いた口が閉まらなかった。
父はこんなに人選に鈍感な人だったのだろうか。