淋しがりやのルビー

(どうしよう、覗きたい)


つい誘惑に負けて、出入り口に近寄った。


すると、扉がきちんと閉まってなくて、5センチほどの隙間から中の様子を見ることができた。


最初に見えたのは黒板と窓側に集められた机と椅子。


どうやらこの扉は教室の前方の扉のようだ。


視線を机に沿って左に動かすと、ちょうど教室の中央に人はいた。


あたしに背を向けるように立つパーマをあてた長い髪の女の子と、うつむき加減でその子と向き合っている神藤くんの姿。



その途端、ザワッと血が騒ぎだす。



「キミのこと……」


神藤くんがしゃべると、彼の香りが届く。


その肌の下に流れる血の香りが。



ああ、ダメだ。


また敏感になりすぎてる。



口と鼻を覆うように左手をあてる。


普段なら、血が流れない限りはその存在を感じないのに。


「なんとも思ってない。好きでもない子と付き合う気はないんだ」

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