淋しがりやのルビー
「ありがとう」
少し迷ったけど、そこまでされたら受け取らないわけにもいかず、ありがたく水をいただいた。
と言っても、喉を通る水の量はごくわずか。
こんなものでは渇きも飢えもおさまらない。
それがあたしの現実だった。
「さてと、もう帰るね」
「おお、気をつけて帰れよ」
うなずきながらペットボトルを彼に返すと、教室をあとにした。
響く自分の足音。
ちょっとしたことが気になって、イライラする。
ああ、欲しい。
まだ血の香りが鼻に残っている気がする。
我慢できない。
自分の親指を口元にあて、がりっと噛む。
少しにじむ血を舐める。
自分の血がおいしいわけじゃない。
気休め。
本当に欲しいものを手に入れるわけにはいかないから。
あたしは歩く速度をあげて、下駄箱へと急いだ。