淋しがりやのルビー

人をその美しさで魅了して、相手が恍惚として何も考えられなくなっているあいだに血をいただく。


もちろん、美人でないあたしにそんな芸当ができるわけもなく、両親がそんなふうに『食事』しているのを見たことあるだけなんだけど。


だからか何か知らないけど、あたしは人から血を吸うことが怖い。


その首筋に牙をたて、人を傷つけるのかと思うと、身がすくんで吸血行為ができない。


「あたしは……これがあれば大丈夫」


右手に握ったままのパックを見る。


トマトの絵の描かれたトマトジュースもどき。


中身は輸血用の血液が少しとカモフラージュにトマトジュースをたくさん混ぜた飲み物。


人にばれないように吸血行為におよんでいる仲間が分けてくれるもの。


できるだけ血液は飲みたくないと思ってはいるけど、人の食事のようにあたしにはこれが欠かせない。

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