黒猫前奏曲
サラッとした黒髪におしゃれ眼鏡をかけて人当たりが良さそうな人であるが、口調がとても汚いのが残念である。
だが、この顔には見覚えがあった。

「あれ?あなたどっかで…」

「あぁ。今日、様子を見に行ったからね。でも、道路挟んだ向かい側だったのに、よく俺だってわかったね」

感心したように男は笑いながら言う。弥生の時よりも口調は柔らかだった。

「私、目はいい方だから…それに、目立ってたし」

「そう?目立つというなら君の方が目立っていたよ。『キャッツ』の看板娘、黒澤マリアさん?」

そう微笑みながら言われても寒気が走った。それは、目が笑っていないからだ。

「へぇ~、私のことよく知ってるね」

私は挑発するように彼に言う。

「『ブラックキャット』は、黒澤さんだってことは有名だったからね。だから、道成に頼まれた時は、正直驚いたよ」

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