紅蒼の空
「イテテ……」

 と、腰を押さえながら立ち上がると。

「ベシンッ!」

 目の前に上履きの底が見えた。

 明日香はまだ入口付近にいる事から、おそらく飛ばしてきたんだろう。

「てか……なんで俺がこんな目に……」

 最後にそう言い残すと、顔に靴をめり込ませたまま、仰向けに倒れた。

「あーあ。やり過ぎだよ……」
「いいのいいの。このくらいしておけば、次からは、私を足音で判断出来るでしょ」

「多分次から速攻で逃げると思うよ」

「アハハ。私の方が早いから大丈夫よ」

「あんた……鬼だね」

 苦笑しながら話す、少し細めの男。

 この男は桐原宏輝といって、実は明日香と−−



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