感覚のレベル【BL】
 
 間もなく扉が開いて、くしゃくしゃになった黒髪を掻き上げながら彼が登場。

 まさか僕が座り込んで居るとも知らず、左右を一回ずつ見回した後、ようやく足下に視線を降ろした。


「……よぉ」


 先制攻撃は僕。


「なんだ、お前か」


 よく知ったテノールの声が低い天井に響く。

 彼もまたその場に座り込んで、僕と目を合わせてくれる。


「お前、クソ暑い時に余計暑くなるようなことするなよ」


「……一也の……所為だっつーの」


「人の所為にすんなよ」


「……お前の、所為なんだよ」
 
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