寺子屋恋物語
「そこもと、まだ不埒な生体反応を続けたるか」
由香子は三角の眼鏡をかけ直しながら厳しく言い放った。
「せんせひ、それがしの身長直線に対する情熱の高さをお計り願う」
「なにゆえそのやうな卑猥な申し出を教師たる我にしたるか」
「ききとどけたまえ」
「罰を与ふ」
由香子は教鞭を克己の太ももにピシリと振り下ろした。
「嗚呼、またしても、痛みに起因する聖的あぷらうちを」
克己が押し殺した悲鳴を漏らしたとき、そこにアリエッティがやってきた。
「なんたること。我の想い人たる克己くんが、せんせひと、かような場所で西洋風ぷれいを。もはや今生に光無く、ここで朽ちるもやむなし」
アリエッティは懐からダイナマイトを取り出して、マッチに火をともした。
「鳴かぬなら あたしが泣いちゃう だって 女の子だもん」
少女は辞世の句を読みあげた。


< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop