【短編】屋根裏

「悩みがあんならさ、話して欲しいなと思ったんだ」


「……あぁ、そう」


転校生の眼がまた腕の中へと埋まる。


「……言ったってどうせ、信じやしないさ」


くぐもった諦観は、なるほど転校生の心の奥に根を張ってるようだ。


無理に聞き出そうとしても、まず無理だな。


「なぁ、転校生。お前さ、学校楽しいか？」


「……楽しそうに思えるなら君は委員長を辞めるべきだな」


「それも、そうだな」


くく。自嘲気味に笑ってみた。まるで面白くはないけれどさ。


「学校、楽しく過ごそうぜ？高校生活なんて俺らあと一年ちょっとしかないんだぜ？」


「……」


「その後はクソみたいに広い世界に出ないといけないんだ。今くらいさ、楽しく行きたいじゃんか？」


「『広い世界』ねぇ……」


転校生が腕の中、クスクスと笑う。


「何か、おかしい事言ったか俺？」


流石にイラっと来た。


「……いや、別に。……お前になら、教えてもいいかなと思ってさ」