【短編】屋根裏
「本当か?」
「……いいさ。けど、後悔はすんなよ?」
再び前髪の奥から覗く双眸が俺に向く。
意味深な言葉ではあったが特に気に留まらなかった。
転校生は、その独特な低すぎる位に低いトーンで語り始めた。
「二週間前の事だ。俺は自室で寝ようとしていた。
ベッドに入り、明かりを消して暗闇の中俺はさ天井の隅が開いてるのに気づいた。
すぐに閉めようと思って天井に近づいたんだが、好奇心に駆られて屋根裏を覗いてみたんだよ。
そこはさ俺の想像以上に広くて、奥なんか全く見えない訳さ。
俺は屋根裏に上がって、全容を見ようと思った。
けれど歩いても歩いても壁にたどり着かなくて、いつしか振り向いても登った穴が見えない所まで来ていた。
途方に暮れたな。
方角も、時間も、光もなかったんだからそれも当然だ」