Hearts! 【BL】
 
「何だか、独りきりになってしまったような気分だよ……兄さん……思い出したくないことまで、蘇ってくる……」


 思い出は、何も良いことばかりではない。

 父が死んだ時、レイガートが姿を消した時、母は気が狂ったのかと思うくらい、自分を見失った。

 彼は、そんな母を支え、この国をまとめなければならなかった。

 私情を捨て、王として、国を治めなければならない。

 若すぎる王に、全ては重くのし掛かった。


「私情は捨てたつもりだったけど、無理だったみたいだ‥‥」


 ──自分には、譲れないものがある……。だから、


「……スマルト……?」


 その声に、彼は懐かしさを感じた。

 振り返ってみると、自分と同じ顔──レイガートの姿があった。
 
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