Hearts! 【BL】
 
 戦士控え室の通路を抜けて、少し行くと、関係者専用の個室と、アリーナへ続く通路がある。

 さすがにここは人気がない。

 軍や騎士団からの出場者も一般の控え室を使うためだ。

 ──スマルト、どこ行ったんだろ……。ヴァレリスに見つかったらどうするんだよ。

 そんなことを思いながら、通路を歩いて行く。

 自分の足音だけが妙に響いていて、外の騒ぎが嘘のようだ。


「―───」


 不意に誰かの話し声が聞こえたような気がして、ラーンは立ち止まった。


「スマルト?」


 耳を澄ましてみる。どうやら、声は近いらしい。

 数メートル先のドアの前に立って、彼はノックをしてみようと手を上げた。


「何やってんだ」


 刹那、背後から彼に声が掛けられた。
 
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