やくざと執事と私【第2部:ラブ&レース】
「ふ~ん、そうかい。・・・・それじゃ、別に問題ないね。・・・草壁、アタシは、もう納得したから、帰るよ。」
静代は、草壁に声をかける。
「なんだ、祖母さん、帰んのかよ?」
突然の静代の言葉に驚いた組長が声を上げる。
「んっ?別に帰ってもいいだろ?アンタの婚約者を見に来ただけなんだから。それとも、寂しいのかい?」
組長を馬鹿にした笑いを浮かべて見る静代。
「誰が、寂しいんだよ。さっさと帰れ、ババァ。」
組長が、静代を冷たく突き放す。
「そうはいきませんわ!」
3台目のベンツの中から叫び声が聞こえた。
再び、草壁が、後部座席のドアを開けると、そこから、体のラインのわかるスーツに身を包んだ美人の女性が降りてきた。
「これは、これは。あなたのような美しい女性を長い間、車の中で待たせていたとは、この大和、一生の不覚。あっ、そうだ。こんなところでは、なんですから、ホテルでも行ってお互いのこれからについて話し合いませんか?」
いつの間にか、美人の女性の前にいる組長。
「あら、婚約者の方は、いいんですの?」
美人の女性が、妖艶に微笑む。
美人の女性の言葉を聞いて、何度も私と女性を見比べる組長。
そして深いため息。
「あなたさえ、いるなら、私は他には何もいりません。」
まるで悲恋の舞台を見ているかのような組長のセリフ。