やくざと執事と私【第2部:ラブ&レース】


「あれは、1年前のある日、葵は、その日、初めて、華木の本邸にいったんですの。いつもは、安全のために別邸で暮らしてましたから。そして、本邸の見事さに感動して、庭を散歩している時にあの事件が起きました。」



ここで、飲み物を飲み一息いれる葵。



「事件?」



組長は、葵の話にくぎづけになっている。



「はい、あの忌まわしき事件。あろうことか、本邸の犬達が、私を取り囲んだのです。絶体絶命と覚悟する私。しかし、その時、颯爽と現れた大和様が、私をかばい、犬達を追っ払ってくださいました。・・・・あの運命の出会いから、葵は大和様をお慕い申し上げているのでございます。」



「・・・・犬?・・・う~ん・・・・龍一は、思いだした?」



葵の話を聞いても思い出せない様子の組長。



執事に問いかける。



「・・・あっ・・・あれですか!華木の家にお邪魔させていただいた時に組長が、華木の庭にいたドーベルマンを気に入って、一匹捕まえて持って帰るんだと必死にドーベルマンを追い掛け回した時のことではないですか?」



執事は、思い出せてうれしそうに組長を見た。



「ああ、あれか!結局、ドーベルマンは、捕まえることできなかったんだよなぁ~・・・・」



組長は、悔しそうな顔をする。



「で、ドーベルマンではなく、女の子を捕まえてきたんですね。」



私は、いつもの調子で組長と執事の話に加わる。



「オッ、うまいこというね、小夜。座布団1枚やろう!おい、山田くん、座布団1枚運んできて!」



組長が声を上げる。



「はい、座布団お持ちしました。」



急に部屋のドアを開け、レナが、座布団を運んできた。



その後ろのドアの外には、真木ヒナタとポチが、必死に笑いをこらえた表情でこちらを覗いていた。


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