やくざと執事と私【第2部:ラブ&レース】
「それでは、私は、他の用事がありますので、もう行きますが、小夜さん、頑張ってくださいね。」
執事が私を見る。
「はい。絶対ポチさんには負けません!」
コブシをグーに握り、意気込む私。
「・・・・勝負相手は、葵様ですからね、小夜さん。」
少し心配そうな表情で私を見る執事。
「あっ、そうでした。どちらが相手でも負けません。」
言い直す私。
「それでは、勝利のおまじないを私から小夜さんに贈りましょう。」
そう言って、執事は、私に近づくと、私のおでこにいきなりキスをした。
「・・・・・」
いきなりのことで何が起こったか理解できない私。
そんな私を厨房に残して、執事は、微笑みながら、厨房を出て行った。
「小夜・・・・顔・・・・・トマト・・・・」
熊さんが、私の顔を面白そうに覗き込む。
「えっ、あっ、熊さんトマト食べたいの?」
凄まじい混乱ぶりの私の頭。
私は、それから1時間は、何も手がつかず、ボーっとしていた。
そして、そんな勝負前日を過ごしながら、ついに勝負日当日を迎えた。