元不良の青春物語

…というか、
たった今気がついたことがまたひとつ。

私、織がどこにいるか知らない。

んでもって、
私、方向音痴。

「……………。」

現実に打ちひしがれる。

「………。」

仕方なく、
耳を澄まして集中する。

織の声か何かが聞こえますように。

……。

うるさいはずなのに、
周りはとても静かだった。

……。

【聞こえて、聴こえて。】

……。

【キコエテ、織ノ声。】

胸の奥で無意識に呟く声。

…「ぁ…。」

不意に、
擦れた、聞きなれた声が小さく聞こえた。

こっち?

一瞬だけ、
小さく聞こえた声を頼りに
四つん這いの状態から立ち上がって、

走っていく。

駆けていく。







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