元不良の青春物語

意識を完全に失ったらしい綾乃を
片腕で支え、織は笑う。

「どーも。」

それは綾乃への感謝への言葉と同時に
目の前の、自分を
この部屋へ閉じ込めた男への
ちょっとした挑発の言葉を兼ねたものだった。

「今度は俺が相手しようか?」

笑みを深める。

「さんざんやられて、
 その減らず口は大したものですね。」

相手の男は嘲るように笑う。

「あいにく、
 これが俺の長所なもんでね。」

「ふーん。」

あたりを見回して、男は笑う。

もう立っているのは織と男しかいない。

「今回は、 
 そこのお嬢さんに免じて、
 退散するとしますか。」

「逃げんのかよ。」

織が顔をしかめる。

「まさか。
 呼べばいくらでも来ますよ。
 わかってるくせに。」

笑みを消さないまま言う男。

「ほら、早く逃げないと、
 上級生を呼んじゃいますよ?」

男がそういうと、
織は悔しそうに綾乃を背負って
教室を出ていく。

「またいつか逢いましょうね?」

腕組をして、
片手でひらひらと手を振る男は
また笑った。










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